事業経営者向けの無担保、小口、短期金融
商工ローン・ビジネスローンは経営者向けの事業資金の無担保金融です。
企業ではなく個人の借金地獄がテーマのサイトなので、自営業者や小規模法人経営の方を念頭にまとめました。
商工ローンとビジネスローンの違い
商工ローンは事業経営者向けの無担保、小口、短期金融です。
消費者金融の個人事業者・中小企業経営者向けバージョンと言えます。
日栄と商工ファンドの繁栄と凋落
商工ローンの名を世に知らしめた二大商工ローンである日栄と商工ファンドは70年代に起業し、80~90年代に大発展した後、没落しています。
商工ローンがいつ頃生まれたものかよくわかりませんが、この2社から類推すると80~90年代に大きく成長した産業だと思われます。
だとすると消費者金融より少し遅いことになりますが、70年代以前の中小企業経営者向け金融の状況ははっきりわかりません。
ただ確かなのは、21世紀に入るまでは個人事業主・中小企業が銀行から融資を受けるのは審査がとても厳しかったということです。
きちんとした事業計画・返済計画が求められ、急な資金、つなぎ資金がなかなか貸してもらえなかった。
商工ローンはその需要を満たすことで急成長していったのです。
しかし、暴力団顔負けの脅迫的な取り立てが社会問題化し、1999年には経営者の国会招致まで行われました。
「返す金がないなら、眼玉や腎臓を売ってこい!」という恐ろしい取り立ての録音テープが繰り返しニュースで流されました。
2000年代に入り、この2社は急速に凋落します。
銀行ビジネスローンの出現と凋落
かわって2000年代前半に銀行がこの分野に「ビジネスローン」の呼称で進出してきました。
スコアリングシステムという低コストの自動審査システムを導入して、商工ローンが独占してきた市場に参入したのです。
しかし、5年もすると、このスコアリングシステムの信頼性がとても低く、ビジネスローンは儲からないことが判明しました。
とどめを刺したのが2008年のリーマンショックで、中小企業の倒産が相次ぎ、ビジネスローンの貸し倒れが激増しました。
2000年代後半には、銀行はビジネスローンは失敗だったと悟り、手を引き始めました。
メガバンクのほとんどが早々に撤退、地方銀行はまだやっていますが、審査は以前よりずっと慎重です。
呼称はビジネスローンのままでも、実態はプロパー融資、保証協会の保証付き融資ということもあります。
現在の商工ローン・ビジネスローン
ややこしいことに、最近はノンバンクが「商工ローン」ではなく、「ビジネスローン」を名乗るケースが増えました。
日栄や商工ファンドの怖いイメージがつきまとう「商工ローン」より、もともとは銀行が作った「ビジネスローン」という言葉の方がイメージがよいからです。
というわけで、現在では「商工ローン」と「ビジネスローン」は区別がなくなり、事業者がノンバンクか銀行かという区別だけになりました。
また、規制が強化されたために、正規の貸金業者であれば、ノンバンクの事業ローンは怖いということもなくなっています。
日栄と商工ファンドの事業の経緯
最後に社会問題を引き起こした2大商工ローンの起業から凋落までを確認してみましょう。
日栄
日栄は1970年に中小企業への無担保・小口・短期融資を事業内容として設立されました。
順調な成長はバブル崩壊後も止まらず、1995年には東証一部上場、1998年には商工ファンドを抜いて業界最大手となりました。
しかし、1999年に強引な取り立て手法が社会問題化し、国会でも取り上げられ、株価は暴落します。
2002年にネガティブイメージの「日栄」から離れるために「ロプロ」に社名変更。
支店網の撤退など事業の立て直しを進めますが、過払い金返還で苦境に追い込まれ、2009年にはついに倒産します。(会社更生手続)
2010年Jトラストの子会社になって更生手続きを終結、日本保証に社名変更しました。
倒産した武富士の消費者金融事業を買い取り、これで伸ばそうとしたこともありましたが、イメージが悪く、ブランド廃止に至りました。
日本保証は現在もあり、事業者向け貸付・消費者向け貸付・信用保証業務・債権買取業務などを行っています。
商工ファンド
商工ファンドの創業は1978年。
この会社も商工ローン事業で大きく成長しましたが、1999年に商工ローンが社会問題化。
ネガティブイメージから逃れるために、2002年に(株)SFCGに社名変更しました。
SFCGは何ともベタですが、Shoko Fund Company Groupの略です。
事業再編を進めますが、過払い金返還や常軌を逸した取り立てに対する損害賠償で苦境にあえぎます。
そこへ2008年リーマンショックが起きて資金繰りが悪化、2009年に倒産するに至りました。(民事再生法)
しかし、民事再生手続き中に数々の不正が発覚したために民事再生手続きは廃止され、破産することになりました。
創業社長自身も破産した上に逮捕・起訴されましたが、無罪になっています。
要するにこの会社はすでに消滅して存在しません。