【債権者平等原則について|債務整理トピックス】

任意整理は個別条件での交渉が可能

債務整理においては、すべての債権者を平等に扱わねばならないという大原則があります。

個人再生や自己破産では、この原則は厳密に守ることが求められ、違反すると重大なペナルティが課せられます。

しかし、任意整理では自由裁量の余地があり、弁護士によってこの原則の捉え方が違うようです。

これについてまとめました。

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偏頗弁済(へんぱべんさい)

債務整理の申立ての直前に一部の債務者にだけ多く返済するのを偏頗弁済といいます。

債権者平等の原則の原則に反する行動の代表例です。

よくあるのが、自己破産の申し立てをする前に親からの借金だけは全額返しておこう、みたいな行動です。

自己破産や個人再生のように裁判所が管理して行われる手続きは、「債権者平等」の原則が厳格に適用されます。

そのため、偏頗弁済は非常にまずい事態を引き起こす可能性が大きいです。

個人再生や自己破産における平等原則の扱い


裁判所が管理する手続きの特性
債務整理を依頼した弁護士は債務者の味方です。

個人差はありますが、合法の範囲で、できるだけ債務者の都合のいいようにしてくれます。

しかし、裁判所は債務者とすべての債権者の双方に対して平等に利益を考慮する立場です。

債務者や一部の債権者にだけ都合のいいことを黙認するわけにはいきません。

それゆえ、自己破産や個人再生のように裁判所が管理して行われる手続きでは「債権者平等」の原則に対する配慮が重要です。

個人再生の場合
偏頗弁済をしていた場合は、その額を最低弁済額に加えて再生計画案を作る必要があります。

偏頗弁済を隠して再生計画案を作ってバレた場合、再生計画が認可されない可能性が大きいです。

ただし「住宅資金貸し付けに関する特則」を用いて、住宅ローンだけをちゃんと支払いながら、他の債務を整理するのは、不平等な扱いですが、例外として認められています。

この方法で、マイホームを残しながら債務整理できるところこそが、個人再生の魅力と言っても過言ではありません。

なお、共益債権、別除権者などは平等原則の例外となりますが、ここでは割愛します。

自己破産の場合
自己破産手続きで偏頗弁済がバレた場合、一番肝心な「免責」が受けられなくなる可能性が大です。

「破産」というのは財産を売り払って債権者に分ける手続きのことで、破産しただけで借金が帳消しになるわけではありません。

財産が何もない場合は破産手続きの開始と同時に廃止を行い、一瞬で破産手続きが終了します。

これを同時廃止といい、自己破産件数の9割を占めますが、この場合もやはり破産しただけでは借金は消えません。

その後しばらくして「免責」というものを得た時、はじめて借金が帳消しになるのです。(滞納税金等は例外)

「免責」を受けると同時に「復権」となり、破産に伴うすべての職業制限も解かれます。

つまり自己破産で重要なのは免責であり、債務者の立場から言えば免責こそ自己破産の目的です。

債権者平等の原則を破ると、肝心要の免責が得られなくなるのです。

裁判所は何処まで調べるか?
「原則はそうであっても、裁判所にバレなければいいではないか」という考え方の人もいると思います。

しかし、初心者弁護士向けのケーススタディー本(※)を読むと、裁判官は提出した預金通帳などを結構細かく見ています。

※「事例に学ぶ債務整理入門」 民事法研究会

まとまった額の引き出しなどは使途を細かく聞いてきます。

裁判官がどこまで提出資料を読み込むかはケースバイケースでしょうし、問題を見つけ出す能力も個人差があるでしょう。

しかし、バレれば一番目的のものが断たれる可能性が大きいわけですから、そんなリスクは冒すべきではありません。

個人再生や自己破産のように裁判所を介する債務整理では、債権者平等の原則は遵守すべきです。

任意整理の場合はどうか?

では、裁判所を介さない債務整理である任意整理の場合はどうでしょうか?

作業としては、依頼者の味方である弁護士が債務者1社1社と交渉していき、その際に他の債務者との交渉内容を開示する義務はありません。

個人再生・自己破産における裁判所のように、中立の第三者機関が監視しているわけでもありません。

実務的には依頼者の利益を優先して債権者平等の原則を破った処理をすることが可能です。

この場合も大原則ないし建前としては債権者平等があるようですが、実務対応には弁護士によって温度差があるようです。

A弁護士の債務整理本より
一括弁済が可能な場合、債権者平等の原則により、すべての債権者に残債の同率を支払う。

例えば残債総額が400万円で一括返済原資が300万円なら300÷400=75%。

だから残債150万円の会社には150万円×0.75=112万5000円、残債100万円の会社には75万円というように提示する。

これで合意できなかったら、再度支払い割合を高めて提示する。

この先生は原則に忠実なようです。

一部の債権者が強硬な場合、原則にこだわりすぎると柔軟性が失われるように思います。

例えばA社だけが75%ではダメ、100%でないとダメと言って譲らなかった場合、どうするのでしょうか。

任意整理は、個人再生や自己破産と違って強制力がなく、債権者が協力を拒否することができるのです。

そういう場合にどうしているのかわかりませんが、この先生はこういうやり方なんでしょう。

B弁護士の債務整理本より
(住宅ローン以外の債務を任意整理することに関する考察)

債権者平等の原則に反しており、許されないのではないかという理論的問題が考えられる。

しかし、住宅ローンは有担保でサラ金やカード会社は無担保の「一般債権者」である。

「債権者平等」の債権者とは理論的には「一般債権者」のことなので、住宅ローンだけ異なる扱いをしても問題ないと考えられる。

しかし、住宅がオーバーローンの場合は、担保価値を上回る債権については、一般債権者と同じ立場とも考え得る。

他方、住宅ローンとサラ金・カードローンの金利には格段の差があるので、違う扱いをしても合理的な差別として許容できる。

一般人には興味が薄い理論的考察ですが、弁護士には理論を整合させたいこだわりがあることを示す一例だと思います。

柔軟な考え方の弁護士
任意整理の場合には、債権者平等の原則についてもっと柔軟な考え方を持っている先生も多いです。

会社によって違う条件で交渉するとか、特定の債権者だけ任意整理することを許容する考え方です。

債務整理の業界に長くいれば、強硬な会社と柔軟な会社もわかってくるはずです。

例えば大手の消費者金融などは弁護士が介入すると、戦わずに淡々と事務的に応じることが多いと言います。

平等なプランを提示しても1社強硬な会社があれば、全体計画が見直しになります。

柔軟な会社からなるべく大きな譲歩を引き出しながら進めた方がうまく行くと思うのですが、どうでしょうか。

初心者弁護士向けのケーススタディー本に載っていた任意整理事例では、弁護士は債権者平等にはこだわっていませんでした。

他社との交渉内容は教えず、1社1社できる限りの交渉をしていました。

弁護士の中には、債権者平等にこだわらずに自由に交渉できることこそ任意整理のメリットだという人もいます。

私は、任意整理に関する場合、法律理論の大原則より依頼者の利益優先でやってくれる先生を選んだ方がよいと思います。

特定調停の場合

特定調停は裁判所を介する債務整理方法ですが、債権者ごとに違う条件で交渉することが可能です。

これは調停であって、裁判所が手助けする当事者同士の交渉だからです。

ただ、調停の成立率は7%と非常に低く、利用者も減っている制度なので、重要ではないと考えて、末尾に付記するに留めました。

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