【みなし弁済|債務整理トピックス】

グレーゾーン金利を有効とみなす昔のルール

みなし弁済とは、本来は利息制限法により無効となる利息部分について、有効な利息の弁済とみなすことです。

 

法の改正によって、今はみなし弁済は認められなくなっており、無効の利息分は過払い金として請求できます。

 

しかし、借り手の無知に乗じて、今でも業者が同趣旨のことを主張してくる可能性があるので、ちょっと勉強しておきましょう。

 

債務整理におすすめの弁護士はコチラ

 

グレーゾーン金利

みなし弁済について理解するために、まずグレーゾーン金利を簡単に復習します。

 

利息を制限する法律は、出資法と利息制限法の2つがあります。

 

上限は出資法の方が高く、これを超える利息を取ると刑事罰を受けます。

 

では、利息制限法の上限は超えるが出資法の上限以下のゾーンの利息はどうか?

 

かつてこのゾーンの利息は「違法ではあるが、罰則のない」状態が長く続きました。

 

ホワイト(合法)ではないが、罰則がなくて自由にできる以上、犯罪(ブラック)とも言えない。

 

それゆえ、この利息範囲はグレーゾーン金利と呼ばれました。

 

多くの人々が長い間、違法とは知らずにグレーゾーン金利を払いました。、

 

あるいは知っていても、お金が必要なのに銀行から借りられないといった事情で、やむなく払いました。

 

グレーゾーン金利は2010年に廃止され、今はもうありません。

 

利息制限法の上限以上出資法の上限以下の金利ゾーンは今もありますが、出資法の上限が引き下げられて幅が狭くなりました。

 

また、このゾーンの金利を取ると行政罰(業務改善命令・業務停止・免許停止等)が下り、もはやグレーではなく、ブラック(犯罪)です。

 

みなし弁済とは?

さて、グレーゾーン金利を取ることは、違法ではあるが罰則がないために自由にでき、それを払って借りる人もおおぜいいたわけです。

 

では、払ってしまったグレーゾーン金利を返してくれとか、元金返済に充当してくれ、というのはどうでしょう?

 

グレーゾーン金利が違法ならこの要求は認められるべきではないでしょうか?

 

これに対して貸金業者は「グレーゾーン金利は、合法的な会社が広く使っている範囲の金利だ。それを承知で借りて払っているのだから、返済は有効だ。」と主張しました。

 

そして、なんとこの主張が法律でも認められていたのです。

 

「利用者が承知の上で払ったグレーゾーン金利は、有効な利息の弁済とみなす」というわけで、「みなし弁済」と呼ばれました。

 

みなし弁済の法律的要件はもう少し細かいのですが、一般人の理解としてはこれで十分だと思います。

 

みなし弁済の廃止へ

しかし、みなし弁済が合法というのはやっぱりおかしい。

 

グレーゾーン金利は違法だが適切な罰の設定が難しいので罰はナシ、そのため貸す人と借りる人が出るのは仕方ない、というのを仮に認めたとします。

 

しかし、返金請求や元金返済充当も認められないなら、もはやグレーではなく、ホワイト(合法)と何の違いもないではないですか?

 

グレーゾーン金利もみなし弁済も、法の論理としては明らかに矛盾しています。

 

消費者金融や商工ローンの被害が社会問題化していたこともあり、みなし弁済の認定に厳しい条件を求める判決がどんどん出だします。

 

ATMで入金した後で支払った利息がいくらかわかるのは、「債務者が利息と指定して任意に払ったこと」という要件を満たさないから、みなし弁済は認められない。

 

返済が遅れると一括返済を求める条項がある場合も「任意に払った」とは認められないのでNG、などです。

 

そして2006年に貸金業法の改正が成立し、みなし弁済の廃止については2010年から施行されました。

 

過払い金返還請求ラッシュ

みなし弁済が廃止されたことで、違法な支払い済み金利を過払い金として要求できることがはっきりしました。

 

取り返したお金の一部を報酬としてもらえば、弁護士・司法書士にはまたとないビジネスチャンスです。

 

ちょうど規制緩和で弁護士・司法書士もテレビCMが打てるようになったこともあり、彼らが宣伝したおかげで過払い金返還請求ラッシュが起きました。

 

これにより消費者金融は資金繰りが悪化し、倒産も多発して淘汰されました。

 

グレーゾーン金利が廃止されて長い年月が経ったため、それで借りていた人も減り、今では利息の引き直し計算をしても過払い金がある人は減っています。

 

過払い金返還請求はもう終末期に入ってはいます。

 

それでも、もし過払い金があれば債務を減らせたり、思わぬ現金収入になったりするわけです。

 

債務整理の際に、一番先に引き直し計算をすべきであることは今も変わりはありません。

 

債務整理におすすめの弁護士はコチラ

関連ページ

住宅ローンをどうするか?
ここでは持ち家を残しながら、任意整理ができないかというテーマを中心に情報をまとめました。 債務整理におすすめの弁護士はコチラ 住宅ローンから債務地獄に堕ちる場合も 多重債務者にな
債権者平等原則について
債務整理においては、すべての債権者を平等に扱わねばならないという大原則があります。 個人再生や自己破産では、この原則は厳密に守ることが求められ、違反すると重大なペナルティが課せられます。
相続と相続放棄
遺産を相続すると、資産だけでなく負債も引き継ぐことになります。 相続してしまった後で負債の存在が発覚すると、天国から一転地獄に突き落とされます。 こういう形で借金地獄に堕ち、債務整理が
消滅時効
ずいぶん昔の借金を突然に返済請求されて、自分が大きな債務を抱えていると知らされることがあります。 例えば、死んだ親が作っていた借金などです。 遺産を相続していれば、借金も承継します。
受任通知
弁護士に債務整理を依頼すると、まず貸金業者1社1社に「受任通知」というものを送ってくれます。 これは単なる「お知らせ」ではなく、取り立てを停止させる力を持ち、その後の処理にも重要な意義を持つ
弁護士の辞任
債務整理が必要になる人はちょっと問題児の人も多いです。 計画性がなかったり、がまんが苦手だったり、見栄っ張りだったり・・・。 債務整理を多く手掛ける弁護士は、そんなお客さんを相手にして
弁護士費用
任意整理を弁護士に頼むと、もちろん報酬の支払いが必要になります。 どのくらいになるものなのでしょうか? 大まかな事をまとめました。 債務整理におすすめの弁護士はコチラ
ブラックリスト
任意整理をはじめとする債務整理をすると「ブラックリストに載る」とよく言われます。 この「ブラックリスト」とは何なのか、どんな不利益があるのか、などをまとめました。 債務整理におすす
3会統一基準
債務整理について調べていると「3会統一基準」というものを耳にすることがあると思います。 これが何なのかを説明します。 債務整理におすすめの弁護士はコチラ 三会統一基準とは?
取引経過の開示義務
弁護士が債務整理を受任すると、貸金業者に受任通知を送りますが、その文面の中で過去の全取引記録の送付を請求します。 その意義や相手が情報開示を拒否する場合の対策について説明します。
和解契約
任意整理の交渉が済んだら、和解内容を契約書にまとめます。 注意点について、ある弁護士の記述(※)を参考に紹介します。 「クレジット・サラ金の任意整理実務Q&A」 青林書院 Q27和解の
和解金の送金
任意整理で和解が成立した後、和解金(返済)の送金はどのように行うのでしょうか? 2つのやり方があり、それぞれメリット・デメリットがあります。 債務整理におすすめの弁護士はコチラ